氷の王子は花の微笑みに弱い 《 第一章 10

 アリアの豊かなふくらみの先が尖ってくる。そのようすをサディアスは興味深そうにしげしげと眺めていた。
 彼の両手が腕を這い上がって肩まで動き、そのあとは柔らかな双乳へ向かって下りていく。

「もう、ずっと……きみに触れたくて仕方がなかった」

 心なしか彼の呼吸が荒い。

「きみの……ドレスに隠されている部分はどうなっているのだろうかと、そんなことばかり――ああ、いや……こんなこと、言うつもりはなかった」

 サディアスは口もとを手で覆って目を伏せた。

「きみの前ではどうも、正直になりすぎる……」

 自身の失言を恥じるように、サディアスは首を垂れる。そうしてアリアの胸を間近で観察した。
 いっぽうアリアは、彼が胸に顔を埋めているのがいたたまれなかった。
 サディアスの金髪はなめらかだが一本一本が繊細で、それゆえ肌に触れるとくすぐったい。

「……きれいだ、アリア」

 肌に熱い息が吹きかかる。ゾクッと総毛立ってしまったことを、勘づかれただろうか。

「もっと、見たい――……知りたい」

 太ももから脚の付け根までをドレス越しにすうっと撫でられる。同時に、彼が顔を上げた。
 真剣な表情で訴えかけられる。
 アリアは肩をすくめ、言葉なくふるふると首を横に振った。

「なぜ?」
「だ、だって……恥ずかしい……です」

 見られたくない理由はそれに尽きる。
 彼が先ほど撫で上げた終着点は、いま普通の状態ではない。
 なにかが身の内からあふれ出してきている自覚があった。
 そんな状態のそこを、知られたくなかった。
 サディアスは不満そうに「んん」とうなり、アリアと額を突き合わせる。

「では、そちらは諦める。だが、いま露になっているここは……俺のいいようにしてもいいか?」

 うなずくことも、まして「はい」と返事をすることもできなかった。
 それでも、先ほどのように首を横には振らなかった。

(私……サディアス様に胸をいじられたい、って……思ってる?)

 自分のことだがわからなかった。
 そうされたい思いと、いけないという思いがせめぎ合って、明確な結論を出せない。
 サディアスはアリアのようすを見ながらゆっくりと乳房を持ち上げた。

「ぁ……っ」

 自分自身でさえ、そこをそんなふうに持ち上げたことがない。
 彼の手に持ち上げられたふたつのふくらみは揉み込まれて様々に形を変える。

「柔らかい」

 しみじみと言われると、瞬く間に羞恥心がふくれ上がる。
 アリアは耳まで真っ赤にしてうつむく。彼に胸を揺さぶられているのが不思議でならない。

「ん……っふ、うぅ」

 聞きなれないおかしな声が自分の口から漏れ出るのも妙だった。
 出そうと思ってそうしているわけではない。胸の中心、薄桃色になっている部分を指が掠めると、腹の底から吐息まじりの声が出てきてしまう。
 唇を震わせながら悶えるアリアをサディアスは注視しながら忙しなく両手を動かした。
 胸飾りは彼の指のあいだに挟まれて右へ左へと弄ばれる。

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