氷の王子は花の微笑みに弱い 《 第三章 08

 行動を起こさないアリアを見てサディアスはそれを彼女の同意と捉えて、秘芯にふたたび指をあてがった。蜜のあふれ口をまさぐった指だ。ぬめり気を帯びた指先が敏感な肉粒をすりすりと擦る。

「あ、あぁっ……んぅっ……!」

 頭のなかが真っ白になった。快感以外の感情が一瞬で排除されてしまったようにも思えてくる。それくらい気持ちがよくて――ほかのことを考えている余地がない。

「アリア? まだ……『だめ』か?」
「ふゎ、あっ……あぁっ……」

 喘ぎながらぶんぶんと首を横に振ると、サディアスは嬉しそうに笑った。シーツの上に横たわっていたふくらみのひとつを手でわしづかみにして、その先端を指の腹で扱≪しご≫く。
 アリアは「あぁあ、あっ」とひっきりなしに高い声を上げた。
 この嬌声が自分の口から出ているものだとは信じられない。いや、信じたくないというほうが正しい。
 うねるような快感の波が次々と押し寄せて喘ぎ声を絞り出し、意識がどこかへ飛んで行ってしまいそうなほどの恍惚に見舞われる。

「あぁ、ぁっ――……!!」

 ビクン、ビクンという脈動をまざまざと感じる。
 急に全身が気だるくなった。目を開けていることすら辛くなったのははじめてだ。
 ぼんやりと霞む視界のなか、サディアスに手を取られ、甲に柔らかな唇を押し当てられる。


 舞踏会への招待状とともにそのドレスは届いた。
 バーサとともに衣装箱を開けたアリアは、親友に「ちょっと! なにこれ、すごいじゃないっ!」という言葉とともに肩を揺さぶられるまでそのドレスに釘付けになっていた。
 無垢な白を基調にして金銀、そしてピンク色の糸でクリスタルの刺繍が施してある清楚なドレスだ。

「これを着て舞踏会でサディアス様と踊ったら『私は王太子妃です』って公言しているようなものよね」

 クリスタルモチーフのドレスは王族にしか着用を許されていない。

「そ、そうなるわよね……。どうしよう、バーサ!」
「なにをうろたえているの。せっかく贈っていただいたのだから、着て行くしかないでしょう! ほら、お手紙にも書いてあるわ。『絶対に着てくるように』って」
「ええっ!?」

 アリアはあわてて、招待状に添えられたサディアスからの手紙を読む。

「……書いてないじゃない」

 低い声で指摘すると、バーサは「コホン」と咳払いをした。

『そのドレスを着ているきみを見るまで眠れない』

 バーサがサディアスの声や表情を真似して揶揄する。お世辞にもまったく似ていない。

「――って、そういうことでしょう~っ!?」

 「きゃあっ」と声を上げてはしゃぎながらバーサは口の端を最大限に上げて「舞踏会が楽しみだわ」と言った。

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