氷の王子は花の微笑みに弱い 《 終章 05


「ふ、あぁ――ん、うぅ……っ!」

 湿潤な媚肉の行き止まりを、グルグルと円を描くようにしてかきまわされる。ぐちゅ、ぐちゅっと聞きなれない水音が立つ。

「きみのなかはよく潤んでいると思うが――」

 不意にサディアスが言葉を発した。アリアの太ももをつかんで押し開く。

「破瓜の痛みが少しでも軽くなるよう、もっと濡らしておかなければ」

 そう言い終わる頃には彼はアリアの脚の付け根の前に顔を置き、準備を整えていた。
 両脚を左右に大きく開いた状態で、その中央にサディアスの顔がある。羞恥心を煽られるには充分すぎるほどだ。

「サディアス様……ッ!」

 咎めるような調子で呼びかけても、彼は退かなかった。それどころか赤い舌をのぞかせて、いっそう近づいてくる。

「ぁ、そっ、そのような――あ、あぁっ!!」

 ざらついた舌先が花芽の下端に触れて、小さく蛇行しながら反対側の端まで這い上がる。それを何度か繰り返された。

「ふぁ、うぅっ……あぁ、んぁあっ……!」

 いままでだって気持ちがよかった。けれど、もうこれ以上はないと思うくらいいま、快感が高揚している。
 サディアスの舌が花芯から滑り落ち、まわりの溝をたどりはじめた。そうされることで淫核が揺さぶられ、それはそれでまた快楽に拍車がかかる。
 恥ずかしさよりも気持ちよさのほうが圧倒的に勝≪まさ≫っていた。
 サディアスは素早く舌を動かして珠玉を舐め転がし、快楽に溺れるアリアを追い立てる。

「あぁ、っん、あぁあ――……!」

 官能の極みは絶叫とともに訪れた。
 彼の舌に触れられているところが、意思とは無関係にビクン、ビクンッと脈動する。
 体が波打つこの感覚が病みつきになってしまいそうで怖いと思うのに、恐怖心すらきっと快楽の一助になっている。

「ああ……外にまであふれ出してきた」

 アリアは口もとを押さえて下を見やる。サディアスは相変わらずすぐそばにいた。秘部を間近で見つめ、蜜口からあふれた愛液を指で掬っている。

「……!」

 アリアがうろたえているあいだにサディアスは下衣を脱ぐ。羞恥で絶句していたアリアだが、今度は彼の猛々しい一物を目にしたことでまたも言葉を失う。

(こ、こんなに大きいものなの……!?)

 天井を向いてそそり立つそれは太く、見るからに硬そうだった。
 それが、自分のなかに入るのだとはにわかに信じられない。先ほどは彼の指ですらいっぱいいっぱいに感じていたのだ。

「……アリア」

 低くかすれた声で呼びかけられる。
 彼は、これからひとつになることを確認しているのだと思った。
 アリアはコクリとうなずく。
 はじめてつながり合うときは痛むものだとガヴァネスから教わった。それがわかっているだけに身構えてしまうが、心にあるものは恐ればかりではない。

(私も……本当は、この日を待ち望んでいたのかも――)

 身も心も彼のものになるこの日を、きっと心の奥底で渇望していた。
 だからこそ、辺境伯のもとへ送られたとき必死に逃げてきた。
 彼の隣に自分以外の女性が立つのを、許せないと思った。

(サディアス様を、ひとり占めしたい)

 アリアは両手を伸ばし、彼の腕をつかんだ。手にはさほど力をこめられなかったが、『私もあなたを求めている』ということを少しでも示したかった。

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