青年侯爵は今日も義妹をかわいがる 《 第二章 01

 カタリーナはうきうきと心を躍らせながら侯爵邸のサロンでメイドが花を飾るのを手伝っていた。
 これからこのサロンで小さな茶会を催すことになっている。ゲストは、日ごろから懇意にしているアーバー子爵令嬢とその兄だ。

「――やぁカタリーナ、張り切ってるね?」

 ゲストが到着する前にやってきたのはテッドだ。今日の茶会は彼の帰国祝いも兼ねているものの、前座のようなものだ。いずれはこの邸のホールにもっと多くのゲストを呼んで盛大な夜会を開き、テッドの帰国祝いをすることになるだろう。

「だって、今日はメアリーに会えるんだもの」

 アーバー子爵令嬢のメアリーとは年齢も、住んでいる場所も近い。気兼ねなくなんでも話ができる、いちばん仲のよい友人である。
 今日はメアリーだけでなく彼女の兄も一緒にくるらしい。アーバー子爵令息ロナウドはルイスと同い年の二十五歳だ。父親の事業を手伝っているのでいつも多忙だと聞く。

(ロナウドさまが私くらいの年齢のときはよくお会いしていたけれど)

 ここ数年は茶会や夜会でも顔を合わせることはほとんどなかった。今日はテッドの帰国祝いを兼ねているから、それで都合をつけてくれたのかもしれない。
 テッドはカタリーナが飾りつけを終えたばかりのテーブルの席につく。

「あぁ、そうそう。ルイス兄さんは来られなくなったってさ。商談が長引いてるみたい」
「そうなの?」

 カタリーナは表情を曇らせてテッドのとなりの椅子に座る。

「そんなに残念そうな顔をしないでよ。カタリーナはホント、兄さんにべったりなんだから……。今日は一応、僕が主役なんだからね?」
「えっ? ええ、そうね。ごめんなさい」

 自分ではそれほど残念がっているつもりはなかったのだが、テッドにはそう見えたらしい。
 それから間もなくして、アーバー子爵令嬢メアリーとその兄、ロナウドがサロンへとやってきた。

「おふたりとも、ようこそおいでくださいました」

 テッドがにこやかにふたりを迎える。

「お忙しいところ、お越しくださりありがとうございます」

 カタリーナもまたテッドのあとに歓迎の言葉を述べた。

「こちらこそ、お招きいただき感謝する」

 ロナウドが言った。メアリーは小さく手を上げてカタリーナに挨拶をする。カタリーナも同じように手を小さく上げて合図を返した。ふつう貴族令嬢はこのようなことはしないが、ここにはいま身内ばかりなのでよしとする。
 メアリーはカタリーナの向かいに、ロナウドはテッドの向かいの椅子に腰掛けた。
 メアリーとロナウドはよく似ている。ふたりともまばゆく輝かんばかりのつややかな銀髪に鮮やかな翡翠色の瞳を持ち合わせている。身長や男女の骨格の差がなければ本当にうりふたつなのではないかと思う。

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