青年侯爵は今日も義妹をかわいがる 《 第二章 03

 「私の顔になにか?」と尋ねるべきか、迷う。

「ね、ねぇっ、お兄様。夜会へのお誘いをしないと」

 メアリーが言うと、ロナウドは思い出したように「ああ」と言い、上着の内ポケットから白い封筒を取り出した。

「新規事業が軌道に乗ってね。祝賀夜会を開くから、きみたちにもぜひきてほしい」

 テッドがロナウドから招待状を受け取る。

「それはおめでとうございます。ぜひ出席させていただきます。なぁ、カタリーナ」
「はい、もちろん。おめでとうございます」

 それからはたわいのない世間話や、テッドの留学中の話でおおいに盛り上がった。
 そうしておひらきの時間となる。テッドとカタリーナはゲストのふたりを玄関先まで見送る。

「次は私ひとりでくるわ。そのとき、もっとたくさんお話ししましょうね」

 ロナウドが馬車に乗るなりメアリーがそう言った。カタリーナはこくこくと何度もうなずく。
 メアリーたちを乗せた馬車が見えなくなったころ、カタリーナはテッドを問い詰める。

「ねえ、私に縁談がきてるって……本当なの?」

 するとテッドはいかにもギクッとして顔を引きつらせた。

「さ、さぁ……そうなのかなぁ? 僕もよく知らないよ。さっきは話を合わせただけ。だから、詳しいことはルイス兄さんに訊いて!」

 テッドは逃げるようにその場をあとにしてしまう。

(おにいさまに尋ねづらいから、テッドに訊いたのに)

 そこでハタと気がつく。なぜ義兄には縁談のことを尋ねづらいのだろう。
 自分自身に関することなのだ。先ほどテッドに言ったのと同じことを尋ねればよいのに、気が引けてしまう――。


 カタリーナはいつものように枕を持ってルイスの寝室へ向かう。
 今夜はどうしてか、妙に緊張している。
 ルイスの寝室の扉をノックしてなかへ入る。義兄はいつもとなんら変わりなくベッド端に腰掛けていた。
 カタリーナはうつむきかげんにベッドへ向かい、ルイスのとなりに座る。

「今日は茶会に同席できなくてすまなかったね」

 カタリーナは前を向いたまま小さく首を横に振る。

「いいえ……。おにいさまはお忙しいから」
「それで、茶会はどうだった?」
「ええと――」

 これは絶好の機会ではないか。「私に縁談がきていると聞いたのですが」と話を切り出せばよい。

「ロナウドさまの事業が軌道に乗ったそうなので、祝賀夜会を開かれるそうです。私たち全員、出席してほしいとのことでした」

 頭で考えていたのとはまったく違う話題を口にしてしまった。ルイスは「それは喜ばしいことだね」と言ったあと、「ぜひみんなで出席しよう」と言葉を継いだ。

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