青年侯爵は今日も義妹をかわいがる 《 第二章 04

 カタリーナは上の空で「そうですね」とつぶやく。
 ルイスがカタリーナの顔をのぞき込む。

「カタリーナ、どうかした? なんだか元気がないね」
「そっ……そうですかっ!? 元気です、とても」

 この上なく麗しく、文句のつけようのない顔がすぐ目の前にある。ドクッと大きく胸が鳴る。

「そう……? 茶会で疲れたのかな。もう休もう」

 ルイスがベッドに横になったので、カタリーナも彼に倣う。

「……今日は、なんだか遠いね?」
「へっ!?」

 いつもなら隙間なくルイスに寄り添うカタリーナだが、今夜はどういうわけか人ひとりぶんの隙間が空いていた。

「おいで、もっとそばに」

 ルイスが両手を広げる。
 その腕にいつまでも抱かれていていいのだろうかと疑問に思った。

(ロナウドさまは、領地の視察は妻となる人が同行すればよいとおっしゃっていた)

 お互いにもう子どもではない。兄妹といっても血のつながりはない。こうしてベッドをともにすることも、伴侶でもないのに――本当はおかしいのではないかと以前から考えてはいた。
 ただ、彼のそばで眠ることが習慣になってしまっていたし、なにより安心してよく眠ることができるのだ。
 ルイスが王城へ上がるときは邸を留守にするので、ひとりで寝る夜もある。そういう日は決まって、安眠とは程遠い。それを知っているのか、ルイスは領地の視察など同行できるところなら一緒に連れて行ってくれる。

(おにいさまに、一緒に寝るのはやめようと言われるまで――)

 それまでは、そばにいたい。
 カタリーナはベッドの上でゴロンと寝返りを打ってルイスとの距離を詰めた。

「おっと」

 あまりにも勢いよくカタリーナが転がってきたからか、ルイスはいささか驚いているようだった。
 寝返りを打って彼の胸に飛び込んだのは子どもっぽかっただろうか。ルイスは「やれやれ」といったふうに笑っている。

「おやすみ、カタリーナ」

 ちゅっ、と頬に柔らかなキスをされると、またしても胸がトクッと跳ね上がった。先ほどから自分はいったいどうしてしまったのだろう。

「お、おやすみなさい」

 くちづけられたところを中心に、頬に熱がこもっていくのがわかる。

(どうしよう、きっと顔が真っ赤になってるわ)

 そう思うとますます熱が立ち上り、耳までじんっと熱くなった。

「カタリーナ? もしかして熱でも……」

 ルイスが身をかがめ、額を突き合わせてくる。

(ちっ、近い……!)

 こんなふうに熱を確かめられることはしばしばあった。はじめてされたわけではないのに、心臓はバクバクと早鐘を打っている。

「あの、本当に大丈夫ですからっ! おやすみなさい、おにいさま」

 カタリーナは早口でそう言ってベッドに突っ伏すようにして顔を隠し、目を閉じたのだった。

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