青年侯爵は今日も義妹をかわいがる 《 第三章 02

 ルイスはカタリーナの顔を見つめながらベッド脇の丸椅子に腰掛けた。

「汗ばんでいるね」

 いましがたカタリーナが汗を拭った首すじにルイスの手が重なる。
 そうして彼が思いついたように「体を拭いてあげよう」と言うものだから、カタリーナは驚きのあまりルイスの顔を凝視した。冗談を言っているふうではなかった。

「ぃえっ!? い、いいえ、けけ、けっこうです……!」
「……遠慮しないで」

 ――ああ、ほら。
 達観した穏やかな笑顔だというのにどうしてか高圧的で、拒絶の言葉を口にできない。

「少し起きられる?」

 額に載っていた濡れタオルをかすめとられ、背に彼の腕が添う。
 カタリーナは彼の腕に押されてゆっくりと上半身を起こした。ルイスに背を向ける恰好になる。
 背中にいくつかついているネグリジェの小さなボタンがプチ、プチッとひとつずつ外されていく。

(おにいさまったら、本当に私の体を拭くつもりなの……!?)

 カタリーナは胸もとを押さえてうろたえていた。そうしているあいだにネグリジェとシュミーズを肩から落とされてしまった。
 背中を――素肌を、見られている。
 頭のなかはそもそもぼうっとしていたが、卒倒してしまいそうなほどの熱がどこからか込み上げてきてくらくらする。
 ぴちゃ、ぴちゃっと水音がする。ベッド脇のテーブルの上にあるボウルには湯が張ってあった。ルイスはタオルを湿らせているのだろう。
 熱くも冷たくもない、濡れたタオルが背中を緩慢に撫で上げる。

「――っ」

 むずがゆくなってしまうのはなぜだろう。今朝がたメイドにも体を拭いてもらったが、こんな心地にはならなかった。
 背中に全神経が集中する。彼の手がときおり素肌をかすめるので、そのたびにビクッ、ビクッと肩が揺れてしまう。

「……胸のほうも、拭かせて」
「えっ!?」

 カタリーナの両肩がいっそうビクッと跳ね上がる。

「いえ、それはっ……」
「そちら側のほうが汗をかいているはずだ」
「そう、ですけど……でも」

 さすがにそれはどうかと思う。

(もし血のつながった家族だったとしても、男性にそんなところまで拭いてもらうなんて、いけないはず……!)

 そしてなにより、胸に触れられるのは恥ずかしい。
 ルイスの両手が胸に触れるのを想像すると、自分の息遣いが荒くなるのを感じた。
 たとえタオル越しでも、触れられれば胸の大きさや形を彼に知られてしまうだろう。

(そんな……そんなこと……!)

 想像しただけでもいたたまれない。
 これはなんとしても拒まねばならない。そう思って口を開きかけるのと同時に、胸を押さえていた両腕を押しのけるようにして彼の手が入ってきた。

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