青年侯爵は今日も義妹をかわいがる 《 第四章 03

 ルイスは神妙な面持ちで、ふたたび花瓶を見やった。

「ロナウドが持ってきた、その花の意味を……きみは知っている?」

 花言葉のことを言っているのだろうか。
 紫色のライラック。その花言葉は、たしか――。
 カタリーナの思考をさえぎるようにルイスは発言する。

「きみに唯一、教育してこなかったことがある」

 低い声音。
 硬い表情。
 ほほえみもせず、彼が近づいてくる。
 カタリーナはよろよろとうしろ歩きをしてあとずさる。
 足にベッドの端がぶつかり、それ以上は退けなくなる。

「結婚してからの、ベッドでの振る舞い方だ」

 まるでなにか――よからぬ事実を宣告されているかのようだった。

「教えてあげようか」

 かすれ声にはなんの感情も含まれていないように思えた。無表情なので、彼がなにを考えているのかさっぱり読み取れない。

「おにいさま……?」

 もううしろへはいけないのに、彼が迫ってくる。
 カタリーナはベッドに尻もちをついた。彼女の靴を脱がせたあとで、ルイスも同じように靴を脱ぎ捨ててベッドに上がり込んでくる。
 ふたりでひとつのベッドにいるのは特別なことではない。
 十年以上そうしてきたのに、いまさらながらいまだかつてない緊張感に襲われて全身がこわばる。

「ベッドではまず間違いなく、頬ではなく唇にキスをされる」

 他人事のようにそう言って、ルイスはカタリーナに覆いかぶさる。
 それは、くちづけの予告だった。

「ン……ッ!」

 彼と交わす、二度目のくちづけ。
 予告されていたぶん、驚きはさほどない。
 ただ、いままで頬に軽くしかされたことがなかったのだ。唇を何度も執拗に食む、貪るような激しいキスにはそう簡単には慣れない。
 ルイスの両手が妖しくドレスの上を這って、胸のふくらみをつかむ。

「ん、ぅっ……」

 カタリーナがうめき声を上げると、唇の隙をついて彼の舌が口腔へと侵入する。
 押し入ってきた舌が歯列を舐めたどり、舌を絡めとる。同時に両胸をドレス越しに強く揉みしだかれると、ぞくぞくとしたわななきが足先から駆け上がってきて全身を甘くしびれさせる。

(な、なに? この感覚――)

 前にされたときと同じで不快感はない。それどころか、不快とは真逆の反応を示している。
 ――気持ちがいい。
 そう認識すると、よけいに快感が増した。
 いてもたってもいられないような疼きが巻き起こり、手足の先に力が入る。
 ルイスは肌を上気させるカタリーナをちらりと見たあと、ふたたび碧い瞳を閉ざして彼女の口腔を舌で蹂躙した。

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