青年侯爵は今日も義妹をかわいがる 《 第五章 01

 カタリーナはなにをするにも手につかなかった。
 早く答えを出したいと思うのに、考えれば考えるほどなにをどうすればよいのかわからなくなってくる。

(やっぱり……メアリーに話してみよう)

 こういうときはやはり、だれかに相談するにかぎる。メアリーはいつだって適切なアドバイスをくれる。
 カタリーナは親友に手紙を出した。するとメアリーはその日のうちに邸を訪ねてくれた。

「カタリーナったら、困ったことになってるわね?」

 私室にメアリーを迎え入れたカタリーナは、彼女の発言に対して大きくうなずいた。

「どうして私が困ってるってわかったの?」

 手紙には「ゆっくり話がしたいから時間を作ってほしい」とだけ書き綴ったのに、なぜだろう。

「それは、わかるわよ……。もう何年の付き合いだと思ってるの?」

 カタリーナはふたたびこくっとうなずいて、目下の悩みを告白した。

「――うん、うん。なるほど……予想していたとおりだわ」
「ええと……どういうこと?」

 カタリーナが首を傾げると、メアリーは「まぁそれはいいとして」と言いながらカタリーナに話の続きをうながす。

「それで、カタリーナは――私のお兄様があなたに本気かどうか、知りたいのよね」
「う、うん……」

 メアリーが紅茶を飲む。カタリーナはそのようすをじっと見つめる。

「私の知るかぎり、ロナウドお兄様はもう五年以上もカタリーナに片想いしてるわ」
「えっ!?」

 カタリーナの頬がとたんに赤みを帯びる。

「ご、ごめんなさい。メアリーのおにいさまなのに、本気がどうか疑うだなんて……すごく失礼だった」
「ううん。あんなふうに急に求婚されたら、ふつう疑っちゃうわよ。ロナウドお兄様はやることなすこと、いっつも唐突なんだから、困ったものだわ」

 大きく息をついてメアリーは言葉を継ぐ。

「でも、もうひとり困り者がいるわ。あなたのお兄様よ」
「私の……?」
「じつはね、ルイス様からはいろいろと口止めされていたの。カタリーナにはくれぐれもよけいなことを話さないでほしい、って」
「よけいなこと――って?」
「たとえば、あなたに数多くの縁談が寄せられていることとか。ほかには、男女の閨事ね」

 桃色だったカタリーナの頬が今度は林檎のような色になる。

「ルイス様はあなたのことが愛しくて仕方ないのだと思うわ。これは私の推測だけれど、ルイス様はきっと私のお兄様よりももっと長くあなたに片想いしてる」

 メアリーはティーカップをソーサーに戻し、ことさら優しい声音で言う。

「カタリーナはどうなの? あなたにとってルイス様は、ただのお兄様? それとも――」


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