青年侯爵は今日も義妹をかわいがる 《 第五章 07

 ルイスの執務室から自室へと戻るなりカタリーナはメイドたちに取り囲まれた。

「い、いかがでしたかっ?」

 カタリーナはメイドたちにうながされるままソファに腰かけたあと、一部始終を――くちづけられたことは割愛して――話した。

「おめでとうございます! おふたりの想いが通じ合うこの日を、それはもうまだかまだかと首を長くしてお待ちしておりました!」

 老年のメイド頭がそう言うと、ほかのメイドたちも「うん、うん」と大きくうなずいた。
 カタリーナは恥ずかしくなってカァッと頬を赤く染める。

(そ、そんなふうに思われていたなんて)

 まったく知らなかっただけに、よけいに恥ずかしくなる。

「さぁ、のんびりしていられません! 夕食が終わられましたら、お支度をしなければ!」
「支度……って、なんの?」

 メイドたちは一様にニマニマしている。
 それからカタリーナは食事を済ませて、いまだかつてないくらい長い湯浴みをした。
 湯浴みの手伝いをしてくれるメイドはふだんはひとりだけなのだが、今日はどういうわけか数人に体を隅々まで丹念に洗われた。
 湯浴みのあとはベッドの上に寝かされ、全身に香油を塗りたくられた。ふだんから手足には塗ってもらっていたが、全身にそうされたのははじめてなのでくすぐったくて仕方がなかった。
 そうして、ネグリジェではなくナイトドレスに袖を通す。
 落ち着いた風合いの、透け感のある藍色のナイトドレスに身を包んだ自分自身が鏡に映っている。少し大人びて見えた。

「それでは、いってらっしゃいませ」

 メイドたちに見送られ、ルイスの寝室へ向かう。枕は持って行ってはいけないとメイド頭に言われたので手ぶらだ。

(こんなふうに送り出されると、よけいに緊張する……!)

 メイド頭が「準備は万端です」と言っていた。いったいなんの準備なのか、わからないカタリーナではない。

 ――ルイスはこのナイトドレスを見てどう思うだろう?

 さまざまな反応を想像して、期待したり不安になったりと一喜一憂した。
 扉をノックするべく右手を掲げる。しかし、ノックをするよりも早く扉が開いた。

「ああ、いま迎えに行こうかと思っ――……」

 右手を上げたままのカタリーナを見て、ルイスは不自然に言葉を切った。
 彼女の姿を見て、惚けたような顔になる。

「……ルイスさま?」
「今日、は……ネグリジェでは、ないんだね。いつにも増して……きれいだよ」

 ほんのりと頬を赤く染めてルイスはカタリーナに「さあ、入って」と入室をうながす。

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