青年侯爵は今日も義妹をかわいがる 《 第五章 08


「昼間、渡し忘れていたものがあったんだ」

 そう言いながらルイスはベッド脇の引き出しから縦長の箱を取り出した。

「王都へ行く途中で見つけて……その、きみによく似合いそうだなと思って」

 ルイスはカタリーナを鏡の前の丸椅子に座らせて、自身はそのうしろに立った。
 銀色の小さなクマが宝石を抱えたモチーフのネックレスをカタリーナの首に飾る。

「わぁっ、かわいい! ありがとうございます」
「うん、かわいい……けど、ちょっと子どもっぽかったかな」

 ルイスは苦笑して、カタリーナの体を抱き込む。

「きみはもうこんなに素敵な女性なのにね」

 ルイスは銀色のクマを親指と人差し指で軽く弾いたあと、その手でカタリーナのあごをそっとつかんだ。
 くちづけの予感がする。カタリーナはルイスのほうを向いて目を閉じる。
 唇同士が静かに重なる。腰にまわっていた彼の手がゆっくりと動きだす。
 小さな円を描くようにしてルイスの両手はナイトドレスをまさぐりながらふくらみのほうへとのぼりつめてくる。
 このナイトドレスはコルセットやシュミーズをつけないのがふつうなのだとメイドに聞いた。

(でもそれって、とても無防備よね)

 ナイトドレスは薄手の生地が何枚も重なってやっと肌を隠しているという状態だ。
 もしも、ふくらみをつかまれればきっと彼の手の感触をまざまざと感じてしまうだろう。

「……っ!」

 いましがた考えていたとおりのことが起こった。
 ふたつのふくらみをむぎゅっ、とわしづかみにされる。
 カタリーナが肩を弾ませても、ルイスはかまわず彼女の乳房をやわやわと揉む。
 彼の手指はいただきに触れそうで触れない。ドレスの生地越しでも、そうして乳頭のそばをかすめられるともどかしい。
 ふたりの息遣いが荒くなってくる。

「……ベッドに、行こうか」

 耳もとでかすれ声がした。
 カタリーナは小さくうなずく。ベッドへ行くのを待ち望んでいたのだと思われては恥ずかしいので、言葉で「はい」とは返せなかった。
 ふたりしてベッドまで歩き、先にカタリーナが倒れ込む。その上にルイスが覆いかぶさった。
 カタリーナはふと、このあいだの夜会でルイスがほかの令嬢と踊っていたことを思い出した。

「あ、あのっ……」
「ん……なぁに」

 ルイスはカタリーナのナイトドレスを脱がせにかかっている。背中のリボンをほどかれたのが感覚でわかった。

「おにいさまは、ほかの女性とこういう経験が……?」

 思いきって尋ねると、ルイスは手の動きを止めた。

「……ないよ」

 平坦な声音だが明確な返事だった。

「きみ以外に欲情したことなんて、一度もない」

 切なげに声を絞り出して、ルイスはカタリーナのドレスを肩から落とす。

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